世界滅亡 or KISS の楽曲分析!!(後編)

 喜多日菜子アドベントカレンダー2020の21日目の記事です(大大大大大大遅刻@w@)

前回

前回の記事はコチラから

世界滅亡 or KISS の音楽の流れを解説して、魅力を深堀りしようぜ!という記事になります。

続きの本記事は第四章からの解説になります。

「世界滅亡 or KISS」アナリーゼ

第四章:「助けて、王子様......〜」

フル版 04:03〜

煉獄。

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個人的に「煉獄パート」と呼んでる部分です。煉獄とは汚れた魂を清め、天国に向かうために苦しみを受ける場所です。審判の時(第五章)を待つのですが、日菜子の心の奥底では勝利(魔女への回答)を確信した瞬間でもあります。

f:id:pa_pa_geno:20201228164022p:plain(上図)ギターソロの終わりに合わせて、音楽は一気に静かになります。

いわゆる落ちサビに相当する部分だと言えます。 

 

調性は、イ長調となります。

希望と確信に満ちた調で、誠実さがあります。モーツァルトが好んだ調です。

モーツァルト クラリネット協奏曲 イ長調K.622 第1楽章 Allegro - YouTube


(下図)ここのメロディは、よく聞くと第一章や第二章のサビの変型であることが分かります。

(第一章サビ)

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(第二章サビ)

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(第四章主題)

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第一章、第二章とは音楽的構成要素・雰囲気も全く異なりますが、サビの音形アウフタクトで跳躍を伴う3音の上昇→→1拍目・3拍目に重心が置かれる音形でミ(E)に向かい→→その後、シンコペートによる音階的上昇)を維持することにより統一感を産んでおり、落ちサビとして機能しています。

 

(下図)半音ずつ下がる和音進行で強引に第五章のへ短調に向かいます。

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第五章:「そうこうしているうちに〜」

フル版 04:29〜

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審判の時。魔女との約束を果たせず、世界の終わりを迎えます。

短調悲痛、暗い情熱を感じさせる調です。筆者としては「夢の中の悲劇」「悪夢」のイメージが強いです。

チャイコフスキー交響曲第4番はまさに「夢の中の悲劇」といった趣で、この調性の代表曲と言えます。

P.I.チャイコフスキー / 交響曲 第4番 ヘ短調 作品36 - YouTube

ヘ短調ヘ長調同主調です。序奏(ヘ長調との対比でみた場合、夢に入ったばかりの平穏さがそのまま果てしない絶望に変わってしまったかのようです。

 

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(上図、下図)速度は第四章までの速さを維持しますが、拍子は2拍子になります。弦楽器の恐怖を煽る旋律に日菜子のメロディが続きますが、ここで4拍子→2拍子の変化において重要な働きをするのが2拍ずつのメトリックを強調する2拍3連符です。この曲のこうした部分は西洋音楽らしさの一端ですね。

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フル版 05:08〜

神の存在の確認

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「でも、でもでも、こんなところで終わるなんて絶対にイヤ......! 私はあることを決意した」 

テンポは序奏と同じ遅さになり、日菜子のセリフ。

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「あることを決意した」ニ長調に転調します。

ニ長調は高尚、雄大、宗教的、歓喜の瞬間。クラシックで非常によく使われる調でもありますが、「神の存在」をイメージすることもあります。

ニ長調(D-dur)は宗教曲でよく使われる「非常に特別な調」です。何故か? 「D」はラテン語でただ一つの神、ヤハウェデウス「Deus」を表すと考えられたからです。

ハーレルヤ!で有名なメサイアベートーヴェン第9交響曲などで神を歌い上げる場面ではニ長調が選ばれています。

G. F. ヘンデル:オラトリオ「メサイア」より ハレルヤコーラス - YouTube

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」第4楽章 - YouTube

「世界滅亡 or KISS」でもこの部分は、魔法使いさん=日菜子を導く神の存在を意識したパートであると言えるでしょう。

 

第六章:「ずっとずっと 一緒にいてくれたのは〜」

フル版 05:32〜

勝利と世界の救済

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テンポはやや上がります。

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(上図)第四章と同じイ長調になり、最後の大サビの準備に入ります。

 

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(上図)最後のサビも第一章から続くメロディですが、ゆったりとしたテンポで雄大に歌われます。第五章からニ長調イ長調と準備されていた和声はここでホ長調が完全に確保され、この曲の主調、日菜子の調性に戻ってきます。

 

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(上図)サビの終わり部分「私の王子さま」にはテンポに大きくブレーキがかけられ、その後一気に静かになります。この曲の最後にして最大の山場です。

 

終結部:「目を開けると〜」

フル版 6:41〜

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夢から目覚め、いつもの日常に戻るシーン。

第六章を引き継ぎホ長調。テンポは序奏部と同じ速さに戻ります。

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(上図)一見、序奏と同じ音楽であるように思えますが、実はかなり差異があります。

重要な違いは、調性(へ長調ホ長調伴奏(普通の分散和音サビのメロディの二つです。

調性(ホ長調)もサビのメロディも、日菜子を象徴するものと考えられるので、「この世界が完全に日菜子のものになった」ことを暗示しているのでしょうか?

もしくは、「夢の世界での結果を現実の世界に持ち帰ってきた」が言えるかもしれませんね。

「私が決めた運命の王子様は、魔法使い様=P」

 

 

「世界滅亡 or KISS」を聴いてくれ!!!!

どうでしたか?

なんと、ゲーム版では序奏部と第一章しかやってないんですよw

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全体からすると本当に導入部でしか無く、某人気作品に例えたら岩を斬ったくらいの段階ですよこれは!!!

実際のところ、担当アイドル以外のアイドルのソロ曲についてもフル版を聴き込んでる人って少数派だと思います。(自分もフル聴いてない子のほうが多いですし・・・)

「世界滅亡 or KISS」がライブで初披露されるときには、初見Pの驚く姿が目に浮かぶようです。フル版との出会い方はそれはそれで面白いとして、やっぱり担当Pとしてはもっと聞かれてほしい。話題になってほしいと思うわけですよ。

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この記事をみて、少しでも「面白そうだし『世界滅亡 or KISS』のフル版を聴いてみようか!」という方が居ると幸いです。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。